MAY.22.2014

「I.C.E:Creative Conference」レポート

2014年4月23日、ベルサール六本木にて、I.C.Eの一般会員募集スタートに合わせカンファレンスを実施致しました。 本イベントは、I.C.E主催としては初のカンファレンス。 プロダクション・クライアント・広告代理店の枠を超えてこの業界を盛り上げていきたいという思いのもと、登壇者に広告代理店、メーカー、小売業界で活躍するトップディレクターを招き、今制作現場で何が起きているのかというプラクティカルな話から、未来の展望まで、ざっくばらんに討議が交わされました。

オープニングには、I.C.Eの代表である富永幸宏氏(エイド・ディーシーシー)が登壇し、「イノベーションとストラテジーの組み合わせ次第で無限に可能性が広がっていくインタラクティブコミュニケーションの要は"リアルコミュニケーション"、すなわち"人"になってくる」そして「I.C.Eの大きな使命は業界の地位向上を視野に入れ、次世代の人材を育てること」と挨拶の言葉を述べました。



SESSION 01: Production Management

プロダクションワーカー白書

セッション1には加盟社の代表であり、I.C.Eの発起人でもある9名が登場し、事前に行ったアンケート結果を元にトークを展開。 登壇者は富永幸宏氏(エイド・ディーシーシー / 司会)、澤邊芳明氏(ワン・トゥー・テン・デザイン)、小池博史氏(イメージソース)、遠崎寿義氏(ザ・ストリッパーズ )、村田健氏(ソニックジャム)、築地Roy良氏(BIRDMAN)、北村健氏(ベースメントファクトリープロダクション)、木下謙一氏(ラナエクストラクティブ)、阿部淳也氏(ワンパク)。

アンケートの内容は「社員の人数は?」、「平均年齢は?」といった基本的なことから、「社内コミュニケーションの向上のために行っていることは?」、「今までに困った社員は?」などといった具体的な内容まで。9社の運営方針やノウハウが語られ、各社の個性が浮き彫りになりました。




SESSION 02: Creative Ideas

仕事が広がる!インタラクティブの現在、そしてこれから

セッション2では加盟社のディレクター陣による、先進事例のプレゼンテーションが行われました。

  • 3Dプリンタを使ったプロジェクト
    さわれる検索」(Yahoo! JAPAN)
    富永勇亮氏(エイド・ディーシーシー)

  • リアルとデジタルとつなぐインタラクティブ体験
    PUSH for Ultrabook」(インテル株式会社)
    築地Roy良氏(BIRDMAN)

  • 渋谷デジタル花火大会」(東京急行電鉄株式会社)
    澤邊芳明氏(ワン・トゥー・テン・デザイン)




SESSION 03: Global Marketing

海外のインタラクティブ・コミュニケーション事情

セッション3では、シンガポールや上海をはじめとするアジアの都市に拠点をもつ小池博史氏(イメージソース)、富永幸宏氏(エイド・ディーシーシー)、村田健氏(ソニックジャム)、澤邊芳明氏(ワン・トゥー・テン・デザイン)が登壇し、「海外のインタラクティブコミュニケーション事情はどうなっているのか」、「会社設立手順は?」、「利益を出すには何をすべきか?」などのトピックでディスカッションを行いました。

「今、なぜ欧米ではなくアジアなのか?」という質問に、村田氏は「人件費や家賃がどんどん上がっている今、オフショア開発を期待して行っているわけではない。それよりも同じアジアの仲間としてこれからどうやって一緒に頑張っていけるか、というところですよね」とコメント。

澤邊氏も「アジアにはチャンスが一杯あると思いますし、とにかくエキサイティングで、めちゃめちゃ楽しいんです。起業はしないまでも、イベントに出展するなど、ぜひ挑戦していただきたいと思います」と語り、海外進出を考える参加者にエールを送りました。





SESSION 04: Customer Relations

インタラクティブ・コミュニケーションの未来

プロダクション、クライアント企業、広告代理店のトップディレクターが一堂に会するという意味では、最も注目度が高かったセッション4。
ライオンの中村大亮氏、大丸松坂屋百貨店の洞本宗和氏、電通の佐々木康晴氏、博報堂の須田和博氏、ベースメントファクトリープロダクションの北村健氏、ラナエクストラクティブの木下謙一氏が登壇し、司会をワンパクの阿部淳也氏がつとめました。

冒頭に阿部氏が「今は、どこからどこまでがプロダクション / 代理店 / ブランドの仕事なのか、ということがボーダーレスな時代になってきています。また、メディアや消費者の趣向が多様化し、マーケティングの手法やテクノロジーもどんどん複雑化している。今日はそういった時代の流れを前提として色々なお話ができれば」と述べ、ディスカッションがスタート。

もはや第5のマスではない"デジタル"とは
  • 洞本宗和 氏(株式会社大丸松坂屋百貨店)

  • 中村大亮 氏(ライオン株式会社)

第1のトピックは「ブランドサイドのデジタルマーケティングに対する位置づけ・活用度はどのように変化しているのか?」。

大丸松坂屋百貨店にてデジタルマーケティング全般を担当している洞本氏は、ブランドサイドの現状について次のように語りました。 「我々のようなトラディショナルな企業でもデジタルの要素はマストになってきています。ただし、社内の仕事は4マスとデジタルが分離されていて、担当もバジェットも分かれている。店頭というメディアを基底に、アナログ / デジタルの枠にとらわれず、トータルでコミュニケーションデザインできれば理想ですが、まだ組織がそこまで追いついていない状態です」

つづけて、ライオンのデジタルコミュニケーション推進室にてデジタル全般の仕事に携わっている中村氏が「以前は4マスにデジタルが加わり、5マスという認識だったけれど、ここ一年ぐらいはすべての領域がデジタル化してきているという実感がある」と発言。





  • 須田和博 氏(株式会社博報堂)

  • 佐々木康晴 氏(株式会社電通)

博報堂のiディレクション局でクリエイティブディレクターをつとめる須田氏もそれに同意。「もはやデジタルは第5領域ではなく、すべてにかかっているレイヤー。プロダクションは『デジタルとは何だろう』と問い直しながら仕事をしていく時代ですよね。地球上全体がデジタルでくるまれている、というのが今のリアリティなのでは」

さらに話が進むと、電通のコミュニケーション・デザイン・センターでインタラクティブ分野の取り纏めを行っている佐々木氏は、デジタルという言葉には"まやかし"が潜んでいるとコメント。「僕は20年間デジタル周辺のことに携わっているんですが、ここ1、2年で感じていることは、そろそろデジタルという言葉の"まやかし"に気づいて欲しいということです。よくクライアントさんから『デジタルマーケティングを提案して下さい』といったデジタルを手段とするお話を頂くんですが、本当は手段ではなく、目的の話がしたい。『デジタルマーケティングに移行して何を変えたいの?』といった目的について、クライアントさんとお話ができたらと思っています」

つづいてのトピック「エージェンシーやプロダクションに求められているものはどう変化しているのか?」では中村氏が次のように語り、企業間コミュニケーションの変化を示唆。「最近は会社対会社というよりは、誰と一緒にやるかということを大事にしつつ、一緒に勉強していきませんか、というスタンスでやっています。誰とやるかで、アウトプットのクオリティもプロセスも全然変わってくる。たとえば最近はワンパクの阿部さんやベースメントファクトリープロダクションの北村さんに色々と相談をさせていただいているのですが、それって"会社"に相談するというよりは、その"人"に相談しているという感覚なんです」




  • 北村健 氏(株式会社ベースメントファクトリープロダクション)

    そのような状況下で、今北村氏が意識しているのは、"365"のコミュニケーション。「"4マス + ウェブ"から"4マス to ウェブ"に移行し、360°全方位型のコミュニケーションを設計していく中で、今僕らが意識しているのは、365日の継続的なコミュニケーションです。これからは企業が一方的に伝えるのではなく、ユーザの欲するものにどれだけ差し込めるか、ということが大事。それが僕たちにできるコミュニケーションなのではないか、ということをずっと考えています。佐々木さんのおっしゃっていたように、もうデジタルの"まやかし"では上手くいかんぞ、と。ここ何年かはそういう感覚ですよね



    • 木下謙一 氏(株式会社ラナエクストラクティブ)

    既存の制作フローを問い直す「そのオリエン、違うんじゃないの?」

    つづいて、洞本氏の話から浮上してきたのは、ブランドサイドから代理店・プロダクションに向けて行っているオリエンテーションが上手くいっていないのでは、という問題。「本来はブランドの抱えている問題に対して、本当に解決策となるターゲットや接するメディアを選び、お客様とコミュニケーションしていくということが大事だと思います。ところが、ブランドが正確に問題を把握できていないために、話題になっているこんなテクノロジーやこんなメディアを使いたい、といった断片的な依頼になりがち。そんな時にパートナー企業から『洞本さん、それじゃ駄目ですよ』とつついて貰えると、会社も変わっていけるのかな、と」


    佐々木氏は「そういわれてみると、最近僕らはよく『そのオリエン違うんじゃないの?』という話をしている」とコメント。「クライアントさんから依頼を受けた時に、本当にその広告が必要なのか、と思うことがあるんです。そこで僕らの方からそのオリエン違うんじゃないですか、というお話をする。その時にクライアントさんが話を聞いてくれる場合は、結構幸せな結果につながることが多い。オリエンが違ったまま話が進むと、プロダクションまで不幸なスパイラルに巻き込まれてしまいます。だから『オリエンから考えようぜ』という風潮に皆さんがのって下さると、代理店も変われるんじゃないかという気がします」

    木下氏は「オリエンという概念は、もうやめてもいいのでは」と提案。
    「オリエンをやる前に、代理店やプロダクションを巻き込んで欲しい。むしろ一緒に考えたいんです。ちょっとした悩みや本題に関係ないことでも、僕らを呼んでほしい。僕らとしては、その方がよりクリエイティブなものができるんじゃないか、という風に思います」

    「じつは我々も悩んでいます」とコメントしたのは中村氏。「たとえばサイトを作るときはUIやUXが固まってきた辺りからプロダクションに入って頂きましょう、みたいなケースが多いのですが、それでは遅いという話もある。最近はどの段階でプロダクションを巻き込んだらいいのか、我々も無茶苦茶悩んでいます」




    組織の枠を超えてクリエーションをかたちにしていく、新たな動き

  • 阿部淳也 氏(株式会社ワンパク)

諸々の悩みを解決していくためには、なかなか小回りがきかないのが組織。須田氏はそうした状況から脱却をはかるべく、社内に「スダラボ」という名のラボを立ち上げていました。「やっぱり組織というものは、問題に対応するのがちょっと遅いのかなと思うんですね。それで会社の中にいながら、組織に関係なく仕事をする方法がないかなと思い、ひとつはみ出した存在として『スダラボ』という部活みたいなものを立ち上げたんです。今の時点では自分たちでつくりたいものをつくって提案している状態ですが、そこで開発した『ネイチャー・バーコード』というアプリは、いくつか賞をいただきました。実際にやってみると非常に楽しく活動できていて、こういうのはありだなと思いました」

佐々木氏も、今年の4月に「Dentsu Lab Tokyo」という名のラボを立ち上げ。「『Dentsu Lab Tokyo』というのは何かというと、クライアントさんには悩みがあり、でも同時に独自の技術や商品開発ができるひとがいる。僕らにはアイデアがあり、プロダクションにはテクノロジーや表現力がある。その三者を集めて、皆でワーワーいいながらつくろうよ、というラボなんです。そこでクライアントさんから悩みを聞かせてもらったり、データを見せてもらったり、プロダクションからテクノロジーを貸してもらったりして、クリエイティブ的に何か大きな結果が生まれたらいいかな、と。そういう感じで、僕ら組織もちょっとずつ変われたら」

二人の話を受け、阿部氏は「僕たちI.C.Eにもそういった相談窓口という役割があると思っています。これから何かコラボレーションができるかもしれないですね」とコメント。佐々木氏も「博報堂さんにいる方も、もしやりたいネタがあったら一緒にやりましょう」と語り、組織の枠を超えてクリエーションをかたちにしていく、新たな潮流を感じさせました。

インタラクティブコミュニケーションの未来をになっていく人材とは

最後のトピックはインタラクティブ業界全体にとっても大きなテーマである「インタラクティブコミュニケーションの未来のためには、どのような人材が必要か?」という話題について。登壇者それぞれが意見を述べました。

「広告もモデルが変わってきているので、与えられた枠の中だけではなく、制約を超えてやっていく必要がある。ジャンルの枠を超えて制作工程をディレクションできる人が増えていくといいですね」(中村)

「今はひとつのデバイスで何でもできるスマホのような"スマホ型人材"が必要とされている。そうした状況の中でも、色々なスキルを統合して、新たな付加価値を提案できる人材が求められているのでは」(洞本)

「僕はデザイナー、CMプランナー、ウェブのディレクターとスキルシフトしてきました。これからはそういったスキルシフトが普通になっていくんじゃないかんと思います。ただ、最初にどのスキルからはじめるかは悩ましいですね」(須田)

「プログラミングでもコピーでもアートでも、軸がある人は強い。だから軸は絶対にもって欲しいと思います。また、ルールを変える意欲みたいなものが欲しい。昔からDJ型人材といわれていますけど、何か軸がある上で映画に首を突っ込んでみるとか、全然違う分野に入っていく意欲のある人がいたらいいなと思います」(佐々木)

北村氏は「I.C.Eでは、デジタルのものづくりの楽しさや、この業界の楽しさを若い子たちに伝える活動もやっていきたいと思っています。これから全国の学校などを回るツアーなども予定しています」とコメントし、人材育成に積極的に取り組んでいく姿勢を見せました。

最後に阿部氏が「こういったディスカッションはクライアント VS 代理店 VS プロダクション、みたいなトークになりがちですが、今日話してみて、皆さんの思いは一緒だなと思いました」とコメントし、セッションは終了。時間をおしても話題は尽きず、新たなコラボレーションを予感させるようなセッションでした。



全4コマのセッションを終えた後は、澤邊氏が「I.C.Eは9社で準備してきましたが、これからは皆様にお入りいただいて、はじめてI.C.Eの成り立ちができるのかなと思っております。ぜひ皆様にご参加いただき、一緒にこの業界を盛り上げていければと思っております」と終わりの言葉を述べ、この日のすべてのプログラムが終了しました。
カンファレンス全体を通して浮かび上がってきたのは、いかに信頼できるパートナーとつながり、コミュニケーションを築いていくことが大事か、ということでした。クリエイティブアライアンス初のカンファレンスにふさわしい、有意義な会となりました。
ご協力・ご来場いただいた皆様にご支援いただきましたことに、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。