OCTOBER.21.2016

I.C.E CREATIVE LOUNGE 第4回「ほろよいカンヌ トークセッション」

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルといえば、世界最大の広告・コミュニケーション領域におけるフェスティバル。

2016年8月3日(水)、五反田にある株式会社トレタのラウンジスペースを会場に開催された「I.C.E CREATIVE LOUNGE 第4回」は、「今年のカンヌ」をテーマに、ビール片手にゲストのトークを楽しむ一夜となりました。


モデレーターは、カンヌでの受賞歴多数、過去に審査員を務めた経験もあるクリエイティブ・ディレクターの原野守弘氏。
続いて登壇者は、今年のカンヌでPR部門審査員を務めた橋田和明氏(博報堂ケトル)、プロモ&アクティベーション部門審査員の細田高広氏(TBWA\HAKUHODO)、そして今年新設されたカテゴリであるデジタルクラフト部門審査員の米澤香子氏(電通)の4名。各部門の受賞作を上映しながら、今年の動向や審査会での論点など、外側からはわからないディープな話を披露してくれました。

社会を変えるインパクトを!
プロモ&アクティベーション部門解説・細田高広氏(TBWA\HAKUHODO)

プロモ&アクティベーション部門に今年エントリーされた作品は、過去最多の合計3442件。世界各国の作品と競う中で、今年の日本からの応募は、わずかショートリスト6件、アワード1件のみのエントリーという結果に。はたして、難航を示した理由はなんだったのでしょうか? 

審査のポイントとなるキーワードは、「ビックアイデア」「ビッククライアント」「ビックインパクト」。特に、今年の審査委員長が打ち立てた方針は「チャリティには、とことん厳しく」「賞狙いのアイデアにも厳しく」。つまり、賞狙いの派手なコンテンツではなく、実際にマーケットにインパクトをもたらしたかどうかを入念に見ながら審査が行われたそうです。

日本の作品の問題点はどこか? ひとつは「フェイク・プロブレム問題」。アイデアをより良く魅せるために課題をでっちあげることを指します。ふたつめは、「ビジネス・サスティナビリティ問題」。奇抜なアイデアを生むことに思考を捕らわれて、長期的な貢献ができていないこと。そうした短期的な作品が多いという印象を受けたと細田氏は語ります。

一方、評価の高かった作品のキーワードには、「ビジネスモデルをつくる」「サービスを付加する」「プロダクトからつくる」といったポイントが挙がってきました。ここから、いくつか事例の紹介がスタート

ひとつ目は、新たなビジネスモデルを予感させたハイネケンのプロモーション。こちらは、残ったビールを再利用エネルギーに転換し、ガソリンスタンドで売る、という新しいビシネスモデルを提案しました。
https://www.youtube.com/watch?v=j43vhTfUpXQ

続いて、オーストラリアのTOYOTAのランドクルーザーのプロモーション企画。広大な土地を持つオーストラリアは、国内面積のなんと65%が携帯電話の圏外エリア。そのデメリットを逆手にとって、オーストラリア国民の中でも所有者の多いランドクルーザーを、携帯電話の基地局にしてしまうプロジェクト。
http://www3.toyota.com.au/landcruiser-70

最後に「カンヌのような世界の広告の現場で求められることは、クライアントの意志すらも大きく変えてやろうという勇気あるアクションだ」という、細田氏の言葉で締めくくられました。

これからの時代のPRとは?
PR部門解説・橋田和明氏(博報堂ケトル)


2009年に創設された、カンヌの中では比較的若い部門にあたるPR部門。審査員はCEO、ファウンダー、パートナー、プレジデントなどの役職に就いた方が多く、21人中14人が女性というのが特徴のよう。

この部門で重要とされるクライテリア(判断基準)のスタンダードは、「どれだけ露出したか?」「人々の認識を変えることができたのか?」「人々の行動を変えることができたか?」。

そして、今年新たに語られたクライテリアは、「サプライジング・アイデア」「リアル・リアサルト」など、驚きと実績が審査のポイントになったようです。

ゴールド受賞作品は、健康食品の流通会社のための「BEES CAN FIND SUGAR WHERE YOU LEAST SUSPECT ITNÁŠ GRUNT」。

蜂が糖分を収集する習性を利用し、蜂が市場に出回るインスタント食品へ向かう様子を撮影。現代の食生活で、どれだけ糖分を摂取しているかをビジュアライズする試みが、大きな話題を集めたそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=g4YDREvf3zA

グランプリ受賞作品は、オーガニック食品販売のパイオニアで有名なスーパーマーケットチェーンによる動画「THE ORGANIC EFFECT」。
普段ほとんどオーガニック食品を食べないある家族が、2週間だけオーガニック食品に切り替えた途端、尿から農薬がほとんど検出されなくなったという内容ですが、この新事実を発見するというクリエイティビティの高さが評価されました。この事実に対する確かなデータの提示には、家族のいる審査員を中心に納得の声が挙がったそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=oB6fUqmyKC8

日本の作品は、国内市場向けにローカライズされているためか、背景にある文脈が伝わらず、キャンペーンの意味自体を問われることが多かったそう。一方で、日本のローカルカルチャーのユニークさが伝わったのは日清カップヌードルのキャンペーン「10 minutes noodle」。カップラーメンが誕生から50年の間に、いかに日本の食文化や歴史を変えてきたかを訴えた作品は、ブロンズ賞を受賞する結果となりました。
http://www.donbei.jp/10min/

広告の世界においても、PRと、クリエイティブのチームは、業界的にも遠く、意外と距離があったりするのが実情。
橋田氏からは、「PR担当を企画段階からクリエイティブのチームに入れるなど、新たな協業から見えてくる可能性もあるのでは?」という提案で締めくくりました。

デジタルクラフト部門解説・米澤香子氏(電通)


デジタルクラフト部門は、ウェブやモバイルなど、実際にさわって体験できるものが審査対象。近年はデジタルテクノロジーを用いたイベントやインスタレーションが増えていますが、「実際にさわってみる」という評価ポイントからは外れるそうです、。

今回、グランプリに選ばれたのは音楽のインディーレーベル「Because Music」の10周年記念動画。曲とアルバムカバーを用いてインタラクティブに遊べるウェブサイトで、1週間でFacebookのファンページが30%増加したそうです。インターネットの歴史を祝う作品を受賞させたいという審査員の意向で、グランプリを受賞しました。
http://www.because.tv/

日本からの唯一の受賞作は、KAMRAのミュージックビデオ「Deja vu KARMA」。
ユーザーは自分の顔をPCカメラでスキャンされることで、インタラクティブに映像に参加できます。スキャンされた自分の顔が歪んで動きまわる、不可思議な世界観が評価を受けました
https://kamra.invisi-dir.com/

ディープラーニングのアルゴリズムを使って、レンブラントの絵を現代に再現した「The Next Rembrandt」。人工知能はどこまで人間に近付くことができるのかといった、今年のホットな話題が議論を呼び、ゴールドを受賞しました。
https://www.youtube.com/watch?v=IuygOYZ1Ngo


プレゼン後のトークセッションや質疑応答では、カンヌのような国際フェスティバルにおいて、日本の課題はどうしてもドメスティックな市場の視点に寄り過ぎてしまうことが話題に。一方で、日本特有のデザインスキルは未だに高い評価にあるそうです。

ディープな議論が終わる頃にはほどよくお酒もまわり、ゆるやかな交流会が開催されました。