JULY.28.2017

I.C.E. CREATIVE LOUNGE 第6回「音楽×テクノロジーから生まれるムーブメント ---日本発のSXSWは生まれるか」

今回のI.C.E. CREATIVE LOUNGE以下ICLは、六本木にあるWIRED Lab. にて開催。2017年3月に行われた音楽とテクノロジーの祭典「SXSWサウス・バイ・サウスウエスト」に赴いた3名とともにトークイベントを開催いたしました。

【登壇者】

西村真里子株式会社HEART CATCH 代表取締役

西村真里子株式会社HEART CATCH 代表取締役「SENSORS.jp」編集長
国際基督教大学(ICU)卒。エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後外資系企業のフィールドマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブ会社のプロデューサーを経て2014年株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×デザイン×マーケティングを強みにプロデュース業や編集、ベンチャー向けのメンターを行う。Mistletoe株式会社フェロー、日本テレ「SENSORS.jp」編集長。

安澤太郎TAICOCLUB プロデューサー

安澤太郎TAICOCLUB プロデューサー
こいのぼり株式会社 代表取締役。TAICO Lab.主催。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科中退。2006年より長野県木祖村にて開催される野外ミュージックフェスティバルTAICOCLUBを主宰し、来場者数1万人の日本を代表する音楽フェスティバルの一つへと成長させる。サンリオピューロランドや武雄市等をパートナーにジョイントイベントも手掛けるほか、新たな音の楽しみ方音体験を軸に空間や行為、プロダクトなどを試作していくTAICO Lab.を2016年にローンチ。今後はアーティスト活動の支援などを視野に活動の幅を広げていく。

麻田浩SXSW Japan Rep代表

麻田浩SXSW Japan Rep代表
大学生時代にマイク真木らとモダンフォークカルテットを結成。 1967年の単身在米中にボブ・ディランやジョニ・ミッチェルらのシンガーソングライター黎明期をリアルタイムに体験。それが自身の活動の原点となる。 1976年にプロモーターとして「Tom's Cabin」を設立。 トム・ウエイツやレヴォン・ヘルム、エルビス・コステロ、トーキング・ヘッズなど数多くの海外アーティストの日本公演を手がける。 ラモーンズのジョーイ・ラモーンをロリータ18号のプロデューサーに起用するなど、海外アーティストと日本人アーティストのレコーディングコーディネーションも多数携わる。1990年代から日本人アーティストの海外進出もサポートしており、同時出会ったSXSW人のファウンダーと親交を結び、20年以上SXSWの日本での窓口を務めている。

【企画・司会】

塚田有那編集者キュレーター

塚田有那編集者キュレーター

編集者、キュレーター。大阪芸術大学アートサイエンス学科メディア「Bound Baw」編集長。「領域を横断する」をテーマに、編集、イベントや展覧会の企画、キュレーション、モデレーターなどで幅広く活動する。2010年より、サイエンスと異分野をつなぐプロジェクト「SYNAPSE」を若手研究者と共に始動。編著に『メディア芸術アーカイブス』『インタラクション・デザイン』など、他執筆歴多数。

今年のSXSW を体験して

塚田 SXSW は近年、「インタラクティブ」をキーワードに日本企業もどんどん出展し始めていますが、この流れって最近のものなんですよね。

麻田 麻田音楽業界の人は昔からSXSW のことをよく知っているんですよ。1995年のSXSWに日本人で行ったのは私ひとりなんですが、その後も日本からの参加者はしばらく音楽業界の方ばかりでしたね。

塚田 SXSW って、「テクノロジー、産業、新しいもの」といったように外側からは見えるんですけど、「これからの音楽はどうなる」ということを考えてきた人たちが基盤にあるということが大事なんじゃないかなと思うんですが、そのあたりを伺いたいと思います。

西村 2007年にTwitter でSXSW がどかんと盛り上がったのをきっかけにスタートアップ界隈が「SXSW は世界的デビューができる場所」と認識し始めて、日本の中での注目度は2011年にセカイカメラの江口さんが引き上げたのかなと思います。音楽とフィルムとインタラクティブってあるんですけど、街全体が常に10日間を盛り上げようと、仲間意識を持っているのが面白いなと思います。SXSW に最初に行った日本人として麻田さんに伺いたいのですが、なぜSXSW に?

麻田 子供の頃から音楽オタクで、大学を卒業後にアメリカに渡ったんです。SXSW は1987年に始まったんですが、その頃はみんな「テキサスで開催されるの」といった印象でしたが、実際に行ってみたら、すごくよくオーガナイズされた、いいイベントだなと。

西村 元にインディーズやスタートアップという精神が流れているのはあると思うんですけど、今年も日本からSony やPanasonic などの大企業が出展しているのは面白い兆候ですよね。

麻田 海外でもIBM など大企業は出していますが、大企業とはいえ、社内の尖ったチームで参加しているかたちが多いですね。

西村 製品になる前のテクノロジーに対してフィードバックを得る場所として捉えている感じがありますよね。麻田さんが今年のSXSW のミュージック部門で感じたことは今年はMIYAVI や東京スカパラダイスオーケストラが出て、すごくウケてたんですよね。

塚田 ちなみに、今年に限らず、今までで一番印象的に残っているのは?

麻田 それはノラ・ジョーンズでしょうね。当時はまだそんなに知っている人が多くなかったんですけど、SXSW でのライブがすっごく良かったんです。翌日噂が一気に広がって、それが話題になってグラミー賞にノミネートされ、翌年グラミー獲りましたよね。そういう意味では彼女はSXSW が生んだシンデレラガールです。

塚田 音楽の話もまだまだ聞きたいところですが、「音楽」「インタラクティブ」等々のブースは、お客さんはどんな感じで回るんですか?

麻田 今年からチケットのシステムが変わったんですよね。今まではチケットが分かれていたのですが、今年からはインタラクティブのチケットで音楽のセッションも見れるようになりました。お互いに交じり合おうよ、という流れに見えますね。

西村 混じりあってるという意味では、セッションの流れなども面白くて。基調講演でも遺伝子の研究についての話があったかと思えば、MIYAVIのライブもあり、シンギュラリティを提唱したレイ・カーツワルツさんの話もあり。「テクノロジーの進化」だけでなく、「音楽」もあるというのがやっぱり魅力なんじゃないかなと思います。MIYAVI のライブ、無茶苦茶よかったですよ。

音楽フェスティバルとしてのSXSW

塚田 フェスティバルを続けることって並大抵のことではないと思うので、I.C.E. がこれからやっていくであろうインタラクティブ業界を盛り上げていく動きは、フェスティバルをつくっている人に学ぶべきだなと思っていまして。安澤さんにお話いただきましょう。

安澤 僕らがフェスを始めたのは2006年なんですけど、日本にフェスというものが今ほどなかった状態でした。運営するときに気をつけているのは、地元との関係性ですが、僕たちは「寄り添いすぎない」ようにしています。基本的に自分たちのやりたいことは譲らずに、やれる方法を探ります。そうしないと、新しいムーブメントって生まれないと思うんですよね。ライゾマティクスの真鍋さんとも2006年からご一緒しているのですが、現場のステージ上で数日チームが並んで、最後まで調整しながらやっていました。最初の頃は8時間くらいほったらかしてVJをお願いしていたこともありましたね笑。エンタテインメントってテクノロジーを簡単に伝えるという面ですごく価値があるなと思っていて。音楽はテクノロジーを広めていく装置になっていると思うので、僕たちも意識的に新しい試みや技術は取り入れています。いま、音楽がある場所にひとが集まってきているなと感じていて、海外だとイビザ、ベルリン、クロアチアあたりの名前はよく聞きますよね。フェスが人を呼ぶことで、街の価値が上がっていくのではと思います。

塚田 SXSW とオースティンの関係にも言えそうですね。

麻田 年間400億円くらい、SXSW によってオースティン市にお金が落ちると思うんですが、街おこしとしては最高のクラスになってると思うんですよ。音楽ってまだまだビジネスチャンスが広がっているので、インタラクティブ業界の方から音楽にどんどんアプローチしてもらえればと思っています。

西村 今年日本からSXSW に行った人数が過去最多の1283人いて、1995年に麻田さんがひとりで行った時から1283倍になってるんです笑。そこには経産省の人も大企業の人もアーティストもいて、普段は話すことのない人たちと関わり合う場として、SXSW を使っている人も多いように感じます。今って、自分のソーシャルメディアでも、自分の好きな人だけをフォローして、そこから情報を得ることが多いので、その中で世界が出来てしまっているんですよね。情報がどんどん偏ってきているということが、日本だけじゃなく、世界中で起こっています。ただ、音楽はその突破口になることが出来るのかもしれないなと思います。

麻田 音楽ってやっぱり「聴こえてくる」ということが基本にあると僕は思っているんですけど、最近そういうのがあんまりなくて、情報だけが先走っちゃうのが怖いなとも感じます。

西村 例えばラスベガスだと、モノレールの駅のホームでずっと音楽流れてますよね。日本って音楽が聴ける場所が限られてる気はします。安澤iTunes やYoutube で簡単に聴けるようにもなりましたし、多分音楽を聴く時間そのものは増えてると思うんですけど、自宅やヘッドホンで聴くという人が多いでしょうね。

麻田 アメリカだといまライブの盛り上がりが本当にすごいんですけど、やっぱりライブはヘッドホンじゃ聴けないんですよね...。共有する感動や周りの雰囲気って、ライブじゃないと体験できない。SXSW もまさにそうだと思います。体験しないと分からないコンベンションですので、みなさんもぜひ足を運んでみてください。

この後の質疑応答も途切れることなく、「テクノロジー」「音楽」「フェスティバル」様々な視点からの話は懇親会でもあちこちに見受けられました。

立場や国籍を超えて、同じ興味の元に世界中から多く人が集まるフェスティバル。そこにはきっと、たくさんのヒントがあるはずです。ぜひ、来年はオースティンで体験してみてはいかがでしょうか。

Written by 八木あゆみ