2016.01.20 人材育成委員会 EVENT REPORT

東京・秋の風物詩ともいえるデザインの祭典「Tokyo Design Week」、今年のメインテーマは「インタラクティブ」でした。多種多様なデザインプロダクトや体験ルームが軒を構えるなか、特設展示「Super Interactive & Robot Museum」にI.C.E(社団法人インタラクティブ・クリエーション・エキスパーツ)の数社が出展。
「ロボット、もしくは人間を拡張するデバイス」をテーマとした本展示において、最新のテクノロジーを搭載したロボットやインタラクティブなインスタレーションが集結しました。


Photo Circuit』by IMG SRC

360度の円形に24台のiPod touchが設置されたサーキット空間。この中心に入ると、突如、数十秒間にわたる連続シューティングがスタート!

あらゆる方向でシャッター音が鳴るため、体験者はどこに視線を定めるともなく、みな思い思いのポーズを取っていきます。3人1組でピラミッドをつくるグループもいれば、縦横無尽にジャンプしつづけるグループ、小さいお子さんを肩車でくるくる回転させる家族など、楽しみ方はひとそれぞれ。

撮影終了後は、24台のカメラが撮影した写真をその場で動画に自動編集。数分待てば、専用のYouTubeアカウントに記録され、アクセスすれば四方八方から見た自分たちの動きを鑑賞することができます。

それらはまるで、19世紀に発明されたアニメーションの原点であり、静止画を回転させて絵が動いているように見せる手法「ゾートロープ」を、そのまま現代のテクノロジーによって焼き直したかのような装置とも言えるでしょう。

スマホのカメラが自分に向けられているという点では、まさしく自撮りをする際の構図に間違いないが、それが複数台に囲まれており、なおかつ動画として出力されることがわかると、撮られる側のわたしたちは、自然と跳ねたり、回ったり、踊ったり、自由に身体を動かして表現を始める。

実際に作成されたコマ送り動画は、ブースの外側にカメラと同じように円形に設置されたモニターで再生され、体験者はその場で自分たちの動きを確認できます。それぞれが思い思いに動いたり、全員で統率の取れた動きをしている姿に皆で歓声をあげ、自然に笑顔がこぼれている。

誰でも気軽に自分の姿を画面に収めることができるようになった時代、PHOTO CIRCUITが生み出す新しい"自撮り"体験は、わたしたち、撮られる主体を自由に、そして笑顔にしているのです。


3D GRAFITTI』by IMG SRC

展示会場の中心で、ひと際大きなスペースで展開された『3D GRAFFITI』。

その名が示す通り、3Dのヴァーチャル空間をキャンバスに、立体的なグラフィティを描いていける新しいデジタルツールです。体験者はスプレー缶を模したセンサーを片手に、一見何もない実空間でボタンを押しながら動かすと、iPad上に映るヴァーチャル空間で、スプレーを噴射したような線を描くことができます。


はたから見ると簡単そうに見えても、実際にやってみると意外と難しい「3D」の絵画。それもそのはず、まだ誰も経験したことのない身体動作であり、単なる「絵を描く」という行為とは一線を画す三次元の動きは、脳の普段使わない領域を使うようなもの。夢中になって長時間絵を描いていると、脳のあちこちがかき回されるような、なんとも言えない不思議な感覚を得ることになるのです。



開催期間中、このツールを使ってライブペインティングを行ったアーティスト、Hogaleeによると、「彫刻をつくるような堅牢な素材感を感じると同時に、イラストのような非常に細やかな表現も可能で、三次元の空間把握と二次元の繊細な表現というふたつの領域を行き来する、まったく新しい創作体験」とのこと。

さらに特筆すべき点は、やはりデジタル空間にそのフィールドを構えていることにあるでしょう。リアル空間のように重力や絵画範囲という制約にしばられることなく、あり余る自由を与えてくれるこのツールは、これまでの創作行為の常識をくつがえし、表現の幅を爆発的に広げてくれます。その一方で、表現するわたしたちの豊かなイマジネーションも試されることになるのかもしれません。

これらの新たな絵画体験は、いまどんどんと進化するVR(仮想現実)のクリ絵ーションにおける表現の可能性を示してくれることでしょう。


『COCORO』by BIRDMAN

会場内にぽつんと鎮座するオランウータンのぬいぐるみ。彼が取り付けたハート型のアクセサリーに向かって、来場者は次々と話しかけていきます。

「えーっとね、それはね......」話しかけられた内容に応じて、オランウータンは必死に自分の答えを考えているよう。ハート形の人工知能デバイス「COCORO」は、お気に入りのおもちゃや家具に取り付けると、まるでそのモノに心が宿ったかのように、あなたの呼びかけに応えてくれるもの。

Intelが開発した極小型コンピュータ『Edison』を使用して開発が進められたこの小型デバイスは、ユーザーが発した言葉を感知し、内容に応じた答えを生成してくれます。


「こんにちは」

「ご機嫌いかがでござるか?今日も暑いでござるね」

「おなかすいたね」

「拙者もだよでござる」

「カレーが食べたいな」

「甘口?中辛?それとも大辛?でござる」

「辛口です」

「拙者激辛派だぜでござる」

実際に話しかけてみると、とんちのような返事が返ってくることもしばしば。レイテンシーの関係上、どうしても時間のかかってしまう返答には、自然な「あいづち」を効果的に入れることで、会話を途切らせない工夫もなされています。

いつかの映画で見た、おもちゃたちが喋り出す未来はもうすぐそこにあるのかもしれません。日常をより楽しくするテクノロジーの、新たな使い道を示した作品です。


『Motion Painter』by SONICJAM

壁にプロジェクションされた写真にローラー型のデバイスで直接ペイントできる新感覚のデジタルペイント体験『Motion Painter』。

来場者はまず、展示ブースに設置されたモニターの前で自分の写真を撮影。壁にプロジェクションされたその写真の上にローラーを転がすと自分の顔にモザイクをかけたり、新たな色を追加したりするなど、さまざまな加工を施すことができるのです。

これはローラーに赤外線LEDをつけその座標をトラッキングする仕組みで、ペンキを塗る感覚でデジタルな落書きを楽しめるようになっています。出来上がった画像はSNSでシェアも可能。

身体全体を使って絵を描くという、普段ではなかなか体験できない動きを取り入れ、ローラーの赴くままに自分の姿を塗りつぶしていく感覚は、意外とヤミツキになってきます。シンプルな仕組みながら、何度もトライしてみたくなるデジタルペイント体験なのです。


『Pepperと対戦ゲームやってみた。』by 1→10 Robotics

ソフトバンクが開発した人型ロボットPepper。その愛らしい見た目で広く知られるPepperと、対戦ゲームで真剣勝負!

ゲームセンターでよく見かけるような、コントローラ付きの対戦型ゲームをゼロから開発した1→10 Robotics。備え付けのスティックで上下にコントローラのバーを動かし、パックを打ち返すホッケーゲームで、来場者は1対1でPepperと対決!ゲームがスタートすると、会場はたちまち白熱した空気に変貌しました。

来場者が有利になったかと思えば、たちまち闘志を燃やし、「オラオラ〜!」と挑発をしてくるPepper。さらに、ビームを撃ったり相手の機体を小さくしたりと、あの手この手とずるい技を使ってきます。かつてのSFアニメにあったような、「ロボットvs人間」のリアルな光景が生まれていました。