第21回ワーキング・グループが2019年1月24日に開催されました。今回は会社訪問シリーズとして、WebプロモーションおよびWebインテグレーションの2つの軸で展開する、株式会社フォークさんの仕事場にお邪魔しました。同社は自社イベントを活発におこなっていることもあり、終始スムーズな進行で和やかなムードの交流会となりました。
■株式会社フォーク
1999年創業。ネット黎明期に話題となった学生ベンチャー『電脳隊』出身の塩川淳史氏(現・代表取締役 会長)と仲間4人で設立。システム会社として立ち上がった後、WEBを使った宣伝・広報活動の支援や、広告・プロモーションへと領域を広げていった。現在はシステム開発からコールセンターに至るまで、ワンストップでのサービスが提供できる会社へと成長。創業20周年という節目にあたり、今年は自社の広報活動も活発におこなっている。
2018年、設立20周年に向けてCIをリニューアル
クリエイターにとって興味深い書籍が数多く収蔵された、50~60人はゆうに集まれる広いスペース。ここは、同社の社員休憩室およびレクリエーションルーム。そんな素敵な空間に参加者が集まるなか、冒頭の挨拶を兼ね、佐藤代表取締役が株式会社フォークについて話してくれました。
「20年前に学生ベンチャーとしてスタートし、主にサーバの開発をしておりました。その後、CMSへと幅を広げ、現在はキャンペーン事務局のコールセンターやプレゼントの発送も請け負う事務局業務もおこなっています。しかし、幅広い領域で長年やっていると、弊社に対するクライアントの認知もずれてきます。そこで、昨年は設立20周年に向けてCIをリニューアルするなどリブランディングをおこないました。そのようなタイミングで、業界のよりよい環境をめざすI.C.E.と出会い、加盟させていただくことになりました。この度のワーキング・グループでぜひフォークについて知っていただければと思います。短い時間ですが本日はどうぞよろしくお願いします」
制作部門のユニット制について
その後、マイクはディレクターの広瀬那生登氏に渡り、『地味なフォークが地味にやっている大きな仕事』というキャッチコピーをもとに会社紹介がスタート。
設計などの上流工程から制作・開発まで、ワンストップで対応する同社の従業員は約160人で、仕事は100%受託案件だという株式会社フォーク。他社との大きな違いは、「ユニット制」と呼ばれる制作の組織体系でした。
多くの会社は職種ごとに部署がある機能別組織。しかし、株式会社フォークはひとつの部署にディレクター、デザイナー、フロントエンド、バックエンドを内包する多機能ユニットで構成されています。一方、制作以外の営業、事務局、サーバ、経理、人事、内部統制といった職種は単機能ユニットという構成。
また、東京本社のほかに札幌ブランチがあり、そこでは制作部(デザイナー、フロントエンド、バックエンド)のみが置かれているといいます。東京本社と連携した仕事が中心ではあるものの、札幌開催のハッカソンへの参加やHTML5のイベントなど、地元での活動にも積極的に参加しているとのことでした。
「以前は弊社も機能別組織でしたが、調整に時間がかかることが多かったんです。しかし、ユニット制になってからはリソースの確認を誰にすればいいのかが明確なので、時間短縮になりました。私は公開まで時間のないキャンペーンサイトを担当することが多いので、時短によるメリットは大きいです。また、制作スタッフが打ち合わせに同行することも多く、彼らがクライアントと直接コミュニケーションを取れるというのも利点です。稀にバックエンドのスタッフに指名が入るなど、クライアントとのつながりが深まる点も魅力です」(ディレクター・広瀬那生登氏)
経営者から見たユニット制のメリットに関しては、「20周年記念サイトをご覧ください」ということで組織に関する紹介は終了。その後、ディレクターの杉村貢輝氏にバトンタッチされ、実績紹介がされていきました。
■シチズン腕時計『SATELLITE WAVE GPS F990』スペシャルサイト
新モデル登場によるLP制作。webデザインアワードで賞を獲得。
https://citizen.jp/satellitewave-gps/special/index.html
■慶應義塾 公式ウェブサイト
公式サイトのリニューアルを受注。フルレスポンシブでデザインされたページもの大規模サイトを完成させた。
■京粕漬魚久 コーポレートサイト
「若者にも知ってほしい」「リブランディングがしたい」という要望を受け、撮影から担当したサイト。老若男女に使いやすいサイトになっているのがポイント。
■福島水力発電促進会議
福島県における水力発電の促進を目指したサイト。ロゴ制作から担当した。
https://www.fukushima-suiryoku.com/
豊富なフロントエンド人材がCMS案件を生む
杉村氏はCMS実績が豊富な点も強調。「それを可能にしているのは従業員数の多さにある」というお話でした。
「弊社では、フロントエンドに35人ものスタッフを配置(ディレクター45人、デザイナー25人、バックエンド20人)しています。CMSの構築にはナレッジの蓄積が必要であり、フロントエンドが充実していることのメリットは大きい。また、クライアントに対して安心感を与える材料となっています。直近3年間の概算は、CMS案件引き合い数が115件で構築数は60件。そのうち、運用案件が60%を占めています」
■リクルートホールディング
分社化に伴い、既存のサイトを移設。POWER CMSを用いたサイトのサーバ移設対応。それに伴う構造整理では、1000ページ/5000記事程度を調整。
https://recruit-holdings.co.jp/
■タリーズコーヒージャパン
MTを用いたサイトのリニューアル対応。クライアントの要望に合わせてカスタマイズし、現在も運用中。
■ワールドニュースジャパン
baser CMSを使ったサイトのリニューアル対応。UI/UX提案から受注した。
https://www.bbcworldnews-japan.com/
■BEAMS
店舗スタッフが使用するCMSのフルスクラッチ開発。ブログやスタイリング記事のアップロード機能から、各記事の効果測定機能までを実装
UX MILKと提携した自社広報活動
休憩を挟み、ここからは同社がおこなっているクリエイティブ活動に関する紹介となりました。担当は第3プロデュースユニット部長・チーフディレクターの関智彦氏。
「最近、自社PR活動を徐々に始めています。その一環として、国内外のUX情報を発信するメディア『UX MILK』さんと一緒にイベントをおこなっています。2017年11月の第1回は、弊社の働き方や制作全般の取り組み事例を紹介。2018年5月の第2回は『クライアントへのサイトコンセプト提案』をテーマにしたワークショップ。2018年11月の第3回は『UX居酒屋』と題し、お酒を飲みながらフランクにUXについて語り合うイベントを開催しました」
ワークショップを通じた人材の育成
その後、同社のクリエイティブラボ部長である石射和明氏より、ワークショップ『FUTURE FACTORY』についての話を伺うことができました。
「FUTURE FACTORY 発足のきっかけは、2020年から始まる小学校でのプログラミング必修化に向けて何ができるか? ということでした。掲げたのは『体験を通じて未来のクリエイターを育てる』ということです。ワークショップでは、DIYを通じて手を動かしてものづくりを体験。そこで感性や感覚がアップデートされるきっかけを生み出し、未来に向けて、自らの表現方法でアウトプットできる人材を育てることを目標にしています」
主な事例として紹介されたのは、日用品で作ったオリジナルのモンスターにセンサーを入れ、命を吹き込む子ども向けの工作ワークショップ(日用品を使ってオリジナルのモンスターを作ろう)。グループに分かれて体を動かすオリジナルの遊びを考え、作った遊びをセンサーデバイスを使って再構築するというワークショップ(オンリーワンダーランドであたらしいあそびを作ろう)。
さらに、社員向けとして、市販の録音再生キットを組み立て、それをもとにフィールドワークで気になる音を採取。その後、なぜその音を採取したのかを発表するというワークショップ(サウンド・ピクニック)が紹介された。
「子ども向けのワークショップが多いですが、私たちは、若手社員も未来のクリエイターだと考えています。スタッフの7割は入社3年以内の社員で構成されていますし、彼らには複属・分人型への適応という意味でも、いろんな社会との接点を作って欲しい。そのために、あえてローコンテクストな環境に身を置いてもらう。また、このときだけはスクリーンを離れてアナログなものに触れてもらいたいんです。そうすることで、たとえば美大出身の人なら学生時代のスキルが活かせることができ、会社に来ることはもちろん、社会で生活することが楽しくなるのでは、と思っています」
FUTURE FACTORYの話を終えたあと、そのまま懇親会へ。テーブルの上にはエスニック系のフュージョン料理なども並び、さらにはビンゴ大会も開催。参加したI.C.E.会員はお酒を片手に談笑しながら、会社の垣根を超えた交流が生まれていきました。
自らを「地味」と語る株式会社フォークのホスピタリティあふれる対応と、静かに点り続ける灯火のような熱意に、参加者の満足度を感じた今回のワーキング・グループ。いつにも増して大盛況のなか幕を閉じました。
写真提供・編集/I.C.E.広報委員会 撮影/西田優太|Yuta Nishida
取材・文/富山英三郎|Eizaburo Tomiyama