第27回 I.C.E.ワーキンググループが、2021年5月18日にオンラインにて開催されました。現在21社が加盟するI.C.E.(Interactive Communication Experts)では、同業種の情報共有や働き方改善、地位向上のみならず、業界全体での人材の教育・育成に力を入れています。
その一環としておこなわれた『人材育成セミナー』。記念すべき第1回は『PM的思考による仕事術』というタイトルで、PMの仕事とは何か、業務を円滑におこなうためにはどうすれば良いのかなどといった内容で講義を行いました。登壇したのはI.C.E.理事でもある株式会社パズル岡田行正氏。また、モデレーターとして株式会社電通クリエーティブX 執行役員兼プロデューサーの多田真穂氏も参加しセミナー盛り上げ、オンライン上に集った122名もの加盟各社スタッフに講義がおこなわれました。
講師プロフィール
岡田行正(おかだ ぎょうせい)
株式会社パズル 代表取締役/プロデューサー
一般社団法人I.C.E. 理事
1969年広島生まれ、東京・茨城育ち。1992年成蹊大学経済学部卒業、CM制作会社入社。プロダクション・マネージャーを経て、1999年よりプロデューサー。2006年、株式会社パズル設立。
パズルが独自に作成する『PMノート』とは?
冒頭、「広告業界では縁の下の力持ちや黒子役などと言われ、地味な役割りとされているPMですが、そこにある面白さを知って欲しい」と語った岡田氏。
PMとは、プロダクション・マネージャー/プロジェクト・マネージャー/プロダクト・マネージャーなどを意味しますが、どれも「プロジェクトの進行管理を担う人」(制作進行の責任者)を指します。また、近しい領域としてWebディレクターやディレクターも当てはまることがあります。
PMはプロジェクト進行において重要な役回りですが、その手引きとなるものが少なく、個人の裁量に頼るばかりでなく一定のクオリティや共通認識をもった人材育成を図るため、パズルでは『PMノート』という冊子を独自で作成。仕事のノウハウはもちろん「先輩が後輩に教えたい」共通認識までもが一冊にまとめられているといいます。今回の講演もその冊子が骨子となっていました。
PMノートを作成する意図について岡田氏は、「制作に関わる人が同じ言語で話し、同じ手順を念頭に、同じスケジュール感覚、同じ予算感覚をもって、高いクオリテイを目指して楽しく仕事ができるために制作している」と語ります。
PMの仕事である4つの管理とその中身
講義の序盤、『PMの仕事』として掲げられたのは4つの管理でした。具体的には、1.スケジュールの管理 2.予算の管理 3.スタッフの管理 4.クオリティの管理。
「何をやりたいか? が決まることで、スタッフのみならず、スケジュールや予算、その配分も決まってきます。予算は道具のひとつです。また、ベストなメンバーを集めるためには常日頃から情報収集をして、人とのつながりを大事にすること。そのうえで、いかに的確なゴールイメージをもって方針を決められるか、そのためには初動が大事」など、制作進行の責任者として必要な金言が次々に語られていきましました。
仕事をこなせるようになってきたPMに対しても、「その制作物にチャレンジはあったのか? 自分は成長できたのか? 後輩は育ったのか? という観点を常に持ち、どんな仕事でもアップデートの機会とせよ」と発破をかけます。
ひいては、「良い仕事をして喜ばれることが次の仕事へとつながり、自身とチームの成長が生まれる」といいます。
PMにおける『3つの道具』と『5W1H』の重要性
PMとプロデューサーの関係性やその違い。そしてPMの『3つの道具』と題して、具体的な仕事の進め方が語られていきました。その道具とは、1.仕様書(コンテ、構成書) 2.スケジュール表 3.予算書。
「すべては、何をやるか、いつやるか、いくらでやるかが絡み合うものです。また、仕事の組み方も朝と夜とで変わるほど、常に状況は変わる中で対応していくのもPMの仕事」と語ります。
また、『5W1H』を決めることも、仕事を円滑に進めることに欠かせない要素だと力説します。
「それぞれのトピックスやタスクにおいてこの要素が当てはまります。ここがずれると無駄が生まれてしまいます。ときに嫌われることもありますが、逐一結論を出していくことがPMの仕事。これを年がら年中やっています」
さらに、知的財産権や著作権、個人情報保護法、下請法などについても知っておくことも大事だと語られました。それにより、企画や準備、設計の段階でリスクに気づくことができ、結果的に仕事のスピードがアップし、自信を持って提案できると言います。
分野ごとの仕事の流れを把握し、段階を踏むこと
司令塔としてコントロールするために
「PMは準備と確認の繰り返し。準備が仕事の9割で、それがうまくいけばよい結果が生まれます」というお話で講義は終了。
その後におこなわれた質疑応答では、質問者からより実践的な質問が多数寄せられました。そのことからも、この講義がいかに有用だったかを窺い知ることができました。
I.C.E.では会員社一丸となって人材育成を推進中。今後もさまざまな企画が予定されています。ぜひ、次の機会に参加されてみてはいかがでしょうか。また、新規加盟についても随時受け付けております。
取材・文/富山英三郎|Eizaburo Tomiyama