「チャレンジに肩書きはいらない。」
『U35 Creative & Communication Award』は、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構(DMI)と、一般社団法人Interactive Communication Experts(I.C.E.)の共催によりスタートし、今年で2回目の開催となります。
2つの団体が属するクリエイティブ業界とマーケティング業界は、社会や業界の課題を共に解決していくパートナー。両団体が協力してアワードを開催することで、活気ある若手クリエイターと若手マーケターとの出会いの場をつくり、新たな価値創造の場が生み出されることを目指しています。
応募資格は、応募時点で日本在住の満35歳以下であること。1名もしくは2名1組で企画案を応募、各課題一次書類審査を経て選ばれた5組が、最終審査会にてプレゼンテーションをおこない、その結果に基づき受賞者が決定されます。(※応募詳細はこちら)
アワード2年目となった今回は、株式会社ポーラと株式会社マガジンハウスの2社から課題をご提供いただきました。
▼課題1
株式会社ポーラ「ポーラの肌分析(https://www.pola.co.jp/skinanalysis/index.html)」
概要:「ポーラの肌分析」の認知・利用意向を高めるための施策提案
▼課題2
株式会社マガジンハウス「漫画『恋とか夢とかてんてんてん』(https://shuro.world/manga/koiyumetententen/)」
概要:漫画『恋とか夢とかてんてんてん』をベストセラーに育てる施策提案
最終審査会では、プレゼンテーション10分+質疑応答10分の時間を自由に使えるルールで各チームがプレゼンテーションし、審査がおこなわれました。
漫画『恋とか夢とかてんてんてん』をベストセラーに育てる施策提案
主人公は、上京して10年になる29歳のフリーター。いつも焦って、空回って、思い通りにいかない人生。現代人ならではの悩みが盛り込まれたストーリーは、じわじわと話題が広がりつつある状況です。マガジンハウスとしては、この漫画をなんとかベストセラーにしたいという思いがあります。最終審査に残った5組は、その思いを叶える施策案をプレゼンテーションしました。
読者の共感をブーストすべく、トレンドの言葉を取り入れたハッシュタグで話題化しそうなコンセプトワードを提起し、SNSでエピソードを募集。さらに、作家やインフルエンサーが過去の体験を語りながら負の状況を改善するヒントを与える動画の作成、ロゴジェネレーターの活用といった施策を提案しました。話題性を高めることで、作品を広めていくというものです。
ボードゲームカフェやゲームマーケットの市場が伸びている背景を加味し、主人公に共感する20~30代をターゲットにしたカードゲームの開発を提案。お互いを知るきっかけが生まれる、出会いが生まれる内容を目指します。また、作品の世界観を織り交ぜることで、漫画も読みたくなるよう誘導していきます。
和田一星さん(株式会社クリエイターズマッチ):
夢を追っている人、夢を諦めそうな人をターゲットに据え、自身の悩みをリアルな掲示板に書き込めるスポットを設置。作者にも書き込みをお願いし、最終的に書き込まれたボードがアートになるようにしていきます。さらに、集まったメッセージはアナザーストーリーとしても展開されていく施策を提案しました。
各チームのプレゼンテーション後にある質疑応答では、審査員たちからの激励と共にするどい指摘が次々となされていきます。
最優秀賞は馬場由峰さん/優秀賞は小川敬典さん・田中見希子さん
馬場由峰さん(株式会社Qoil):
実際に企画の実行を検討しているため詳細は割愛させていただきます。
受賞したポイントは以下の通りです。
・マガジンハウス社が設定した課題とアイデアがしっかりと結びついており、明確なコンセプトが提示されていたこと
・コミュニケーションの戦略設計が非常に緻密で、誰に何をどう伝えるかが具体的で分かりやすかったこと
・実際に形にした際のビジュアルやプロセスを明確にイメージできる構成になっていたこと
審査員を代表して、マガジンハウスの永田滋友さんより「馬場さんのご提案は、私たちの作品を深いところまで見ていただき、全面的に向き合っていただいていること。そして、施策全体がトータルでよく考えられていたことが評価のポイントになりました」とお言葉をいただきました。
最優秀賞を受賞した馬場由峰さんは、「プランナーとして指名されるようになりたいと思い、初めてアワードに応募しました。最優秀賞をいただき感謝しております」と語ってくれました。
優秀賞を獲得したのは東北新社のプランナーとプロデューサーのチームでした。
「コンセプトがしっかりしたわかりやすい企画で、とくに女性審査員から好評でした。すぐに実現できそうな施策もあり、可能性のある企画だと思いました」と、マガジンハウスの永田滋友さん。
小川敬典さん/田中見希子さん(株式会社東北新社):
実際に企画の実行を検討しているため詳細は割愛させていただきます。
受賞したポイントは以下の通りです。
・テーマに沿ったユニークな切り口で新鮮さを生み出していたこと
・読者の興味を引く要素の融合が秀逸で、行動を促す力が強かったこと
・心の奥底に潜む不確かな気持ちをエンターテインメントとして昇華させていたこと
小川敬典さんは、「昨年に後輩が最終審査会まで残ったという話を聞いていて、今年で34歳ということもあり、チャレンジの意味で応募を決めました。正直『恋てん』は普段は読まないジャンルの漫画ではあるのですが、「自分が面白がれるポイントはどこなのか」を考えることは、見方を変えるという意味でとても楽しかったです。ベストセラーに育てるというお題自体が自分にとっては初めてでしたが、今回結果を出せたことが自信につながりました。これからもチームで切磋琢磨しながら、様々な賞に応募していきたいと思います!」と、
田中見希子さんは、「今回マガジンハウス様の課題に対しては2本のアイデアを応募しており、受賞できた企画はかなり振り切って勝負に出た内容だったので、一か八かだと思っていましたが、その部分が刺さって良かったと思っています。企画の納得度に繋がるロジックはありつつも、やはり“参加したい”と直感的に感じて頂けることが大切なのだと改めて勉強になりました」と語ってくれました。
“恋てん”の担当編集者であるマガジンハウスの柳川英子さんからは、「ベストセラーにするためには、コアな漫画読みにとどまらず幅広い層に作品を知ってもらう必要がありますが、作品を広めるための具体的な方法を今回色々とご提案いただきました。編集視点では出てこないアイデアばかりで、広告のプロが考えるとこんな角度からのアプローチがあるのか!と驚き、感激しっぱなしでした。柔軟性のある自由な発想をお持ちの皆さんと、ぜひ今後お仕事ご一緒したいです」と総評を述べられました。
また、同じく審査に参加されたマガジンハウスの関谷武裕さんは、「最優秀賞と優秀賞はほぼ同数でした。最後は、作者のことを考えながら、担当編集者と考えて決めました。それぞれ違った魅力があり甲乙つけ難かったです」と審査の裏側を語ってくださいました。
「ポーラの肌分析」の認知・利用意向を高めるための施策提案
2024年7月にリニューアルした「ポーラの肌分析」は、肌三層(表皮・真皮・皮下組織)の細胞のはたらきを推測し、今の肌状態を分析するだけでなく、今後表れやすい肌の変化の「兆し」をとらえる、より多角的な分析へと進化しました。そこに対し、消費者の肌分析に対するマインドチェンジを促進させ、「ポーラの肌分析」の認知度向上および利用者数の拡大を目指す施策を求めました。
男性の美容需要の高まりと、マッチングアプリの利用率増加に着目。マッチングアプリのプロフィールで使える写真撮影プランを提案しました。マッチングアプリからポーラ肌分析へと誘導し、製品(APEX)のお試し体験をしたうえで、フォトグラファーによる写真撮影がおこなえるというものです。SNSでも積極的に配信して話題性・認知を高め、参加者には製品訴求もおこないます。
肌の改善には長い時間がかかることに着目し、長期投資を連想させる「つみたてPOLA」を提案。3つの価格帯のサブスクリプションサービスを導入し、美裕層を軸にロイヤルカスタマーを育てていくというものです。認知度向上においては、ポップアップイベントや出張肌分析イベント、さらにはディスプレイ広告やSNS広告で発信していきます。
肌分析に対する認識を「未来の問題を予防するもの」に変えるべく、健康診断や歯科検診のように「お肌の定期検診」として訴求することを提案。そこに「ご褒美」の要素を加えるべく、ご褒美付き健診カー、企業の福利厚生としての活用、医療機関での無料チケット配布などを行い実体験の入り口を作っていきます。実体験後は定期検診化させることで、ポーラ肌診断を定着させていくという企画です。
最優秀賞は学生チームの大越兼灯さん・岩井拓諒さん/優秀賞は飯島夢さんと佐野弥詩さん
「ポーラの肌分析」の認知・利用意向を高めるための施策提案も審査が難航。最終的に2つの企画に絞り込まれ、そこから審査員たちの熱い議論が交わされていきました。
「限られた時間だったと思いますが、ポーラのことを一所懸命考えていただき、どうすればポーラのお客様に喜んでいただけるか想像いただき、心から感謝しています」と、プレゼンターたちにお礼を述べたポーラの中村俊之さん。
最優秀賞を獲得したのは、インターン先で出会ったという大学生と大学院生コンビでした。
「学生と聞いて驚きましたが、肩書き関係なく、ふたりの熱量は高く、我々にはない発想の素晴らしいご提案でした。習慣化のための企画は、お客さまとの関係性をより深めていく施策であり、ポーラのビジネスモデルと課題にも沿ったものでした。企画に突破力があり、強く、面白い企画でした」と、中村俊之さん。
岩井拓諒さん(東北大学)/大越兼灯さん(法政大学大学院):
実際に企画の実行を検討しているため詳細は割愛させていただきます。
受賞したポイントは以下の通りです。
・課題に対して明確かつ実行可能な戦略を提示している。コミュニケーションの流れが具体的で、ターゲットを的確に捉えていたこと
・提案されたアイデアは新鮮で、他の競合と差別化できる独自の魅力を持っており、印象に残りやすかったこと
・消費者の感情に訴えかける要素が強く、参加意欲や共感を引き出す構成であったこと
・提案内容がさらなる価値創造に寄与するポテンシャルがあること
最優秀賞を受賞した大越兼灯さんは、「ユーザーの目的は肌分析ではなく、もっと楽しくブーストをかけてくれるものだと考え、キャッチーなコンセプトを立てました。一方で、本当にこれを使いたいか、肌分析の魅力を壊していないかを徹底的に話し合いました。そこが伝わって良かったです」とコメントしました。
岩井拓諒さんは、「一週間前までプレゼンの流れが決まらず、夜から朝までずっとオンラインで打ち合わせをしていました。ディテールにもこだわって、生活者にとってワクワクできる施策を考えました。とても難しかったですが、このような賞をいただけて幸いです」と話してくれました。
優秀賞は、コピーライター・プランナー同士のコンビである飯島夢さんと佐野弥詩さんになりました。
飯島夢さん(Septeni Japan株式会社)/佐野弥詩さん(株式会社電通東日本):
実際に企画の実行を検討しているため詳細は割愛させていただきます。
受賞したポイントは以下の通りです。
・ポーラ社を深く理解した上で、その価値を体現する具体的な施策となっていたこと
・消費者インサイトを的確に捉え、消費者の心に寄り添った施策が展開されていたこと
・社会的なトレンドや価値観を踏まえた内容となっていたこと
ポーラの中村俊之さんは、「ご提案内容にリアリティがあり、肌分析をする際の心理的ハードルを下げる企画とアプローチも非常に面白かったです。また、ポーラのBtoB事業との高い親和性など、我々のビジネスを研究してくださった素晴らしい提案でした」とコメント。
「一次審査でフィードバックをいただいてから、ふたりで議論して、ひとつひとつ自分たちの企画にダメ出ししながら考えていきました。それがこういった形で評価をいただけて嬉しいです」と受賞した飯島夢さん。
佐野弥詩さんは、「自分たちの“実感”を大事にしたいと思って企画を考えていきました。飯島さんとは、お互いプランナーだからこそ遠慮なく意見を言い合うことができ、切磋琢磨できたと思っています」とコメントしました。
最後に、ポーラの皆様から総評をいただきました。
「すごくいいプレゼンが多く、良い日だなと思いました。皆さんのプレゼンを聞かせていただいて、新しいことを考えたり、何かをやりたい熱意が伝わって、改めて仕事って楽しいなと感じることができました。明日からまた頑張れそうな気がします(笑)」(山﨑一人さん)
大盛況のうちに終了した、『U35 Creative & Communication Award 2024』。プレゼンターのみならず、運営から審査員(※ゲスト審査員である課題提供会社を除く)まですべて35歳以下ということもあり、交流タイムも活気溢れるものに。希望に満ちた雰囲気で幕を閉じました。
株式会社マガジンハウスからは、漫画家・世良田波波先生直筆のサイン入り書籍が、株式会社ポーラからは、リンクルショットメディカルセラムとBAローションが副賞として贈られました。
I.C.E.では、今後も若手クリエイターの活躍の場を広げる活動に力を入れてまいります。
取材・文/I.C.E. U35プロジェクト