デジタルクリエイティブ業界で働く人たちの働き方改革とキャリア形成支援を目的に、ナレッジの蓄積と発信を行っている I.C.E.マネジメント委員会。
その取り組みの一環として、若手・中堅デザイナーを対象とした初の合同研修を、I.C.E.加盟社である株式会社コンセントの協力の下、開催しました。
研修は5月23日、6月4日、6月18日の3日間にわたり実施され、I.C.E.加盟企業7社から16名が参加。日々の業務から少し離れ「自分自身の価値」や「これからのキャリア」にじっくり向き合う貴重な機会となりました。
本記事では、3日間にわたる研修の様子についてレポートします。
デザイナーとしての視野を広げ、自律したキャリアを描くために
今回の合同研修は「デザイナーとしての成長と視野を広げるきっかけをつくる」ことをテーマに開催。
マネジメント委員会内で各社の課題を取りまとめた結果、若手・中堅層の間では「自分の会社の中だけで業務が最適化されてしまう」「業務の枠を超えることへの不安」といった課題が見られました。こうした現状を踏まえ、今回の合同研修では、組織や役割に縛られず、デザイナーが一人ひとり自律的にキャリアを切り拓いていく力を育むことを目的としました。
他社のデザイナーと対話し、異なる価値観に触れることで、固定化しがちな視点を解きほぐし、「自分で考えて、自分で答えを出す」という、デザインの本質とも言える姿勢に立ち返る。そんな3日間の研修が設計されました。
過去・現在・未来をつなげるワークショップ
講義形式ではなく、自分の言葉で考え、他者と対話しながら整理していくワークショップが中心のプログラムが組まれました。
アジェンダ
・Work.1|これまでの自分に目を向ける
・セミナー|キャリアデザインと資本
・Work.2|キャリア資本の棚卸し
初日は、自身の原点や価値観を見つめ直すワークからスタート。
幼少期から現在に至るまでの経験を振り返りながら、「なぜ自分はデザインをしているのか」「何に価値を感じてきたのか」といった問いに向き合い、キャリアの軸や根っこを言語化していきました。
アジェンダ
・Work.3|求められているものを想像する
・Work.4|デザイナーの価値を考える
2日目は、自分が現在担っている役割や、社会・組織から期待されている成果について客観的に捉え直す時間をメインに。
「自分は今どんな価値を提供できているのか」「チームや組織にとって、どのような存在でありたいのか」そうした問いを掘り下げながら、現状の立ち位置や目指す方向性を再確認しました。
他者との対話や意見交換を通じて、これまで見落としていた自身の強みに気づく場面も多く、1日目の振り返りを起点に、新たな視点と気づきが築かれていきました。
アジェンダ
・Work.5|ロードマップの材料を書き出す
・Work.6|キャリアのロードマップを作る
最終日は「自分の目指す方向性(Will)」「組織・社会からの役割期待(Should)」「いまのスキルや資源(Can)」を重ね合わせながら、今後のキャリアの方向性を整理。
2日間の研修内容を活かしながら、自分自身の未来を具体的な言葉と行動に落とし込んでいきました。
最後には、完成した「自分だけのキャリアロードマップ」をグループで共有する場も設けられました。
多様な視点と対話が生んだ気づき
研修を終えた参加者からは、さまざまな声が寄せられました。
- 人生を振り返ったり、デザイナーを志した原点に立ち返ったりすることで、自分のキャリアをあらためて整理できた
- 普段は他社のデザイナーと接点を持つことがほとんどないので、こうして一堂に会して対話できた時間自体がとても貴重だった
- キャリアロードマップのフレームワークに沿って書き出してみたことで、それまで漠然としていた目標が具体的に見えてきた
- 現在のスキルと理想の姿とのギャップも具体的に認識できたことで、今後どのような経験や学びが必要かを意識できるようになった
こうした声からも、日常の業務から一歩離れ、「自分自身と向き合う時間」の価値を、参加者一人ひとりがしっかりと感じ取っていたことが伝わってきました。
自身の原点や強み、今後の方向性について深く考え、周りの人との対話を通じてさまざまな価値観や視点に触れる。その中で自分自身のこれからのキャリアに必要なヒントをつかんでいったようにも感じられました。
「自分で考えて、自分で答えを出す」という姿勢をあらためて意識しながら、自律的なキャリア形成を目指すこの研修は、はじめての試みでありながら、多くの気づきと前進をもたらすものとなりました。
今後もI.C.E.マネジメント委員会では、こうした機会を通じて、デジタルクリエイティブ業界で働く人々のキャリア支援やナレッジの共有を続けていきます。
取材・文/I.C.E. マネジメント委員会